資本主義と自由

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

ミルトンフリードマン
解説の高橋洋一氏が書くように、1962年に書かれたとはまるで思えない。
すごいの一言につきる。すべてを肯定するわけではないが、経済危機ののちに、政府介入が強まっているこの時期現代においても、十分再考の余地がある論である。
(現在の政府介入は「自由のための政府介入」なのかも知れない。それは認められるのか。)


1、経済的自由と政治的自由
自由主義者は人間を不完全な存在だと考える。P45
・市場は人格を持たず、政治的意見を切り離す。P60

2、自由社会における政府の役割
・拳を突き出す自由は、誰かの顎が間近にあるときは制限されなければならない。P71
・協定の自由と競争の自由の対立。P72
・技術的独占→民間による独占△政府による独占×政府による規制×
郵便事業、鉄道、高速道路、公園
・温情的配慮P82
・政府がやるべきことP85
①法と秩序を維持する
②財産権を明確に定める
③財産権を含む経済のルールを修正できるようにする
④ルールの解釈をめぐる紛争を仲裁する。
⑤契約が確実に履行される環境を整える
⑥競争を促す
⑦通貨制度の枠組みを用意する
⑧技術的独占に歯止めをかける
⑨重大な外部効果に対応する。
⑩狂人や責任能力のない子供を保護する



3、国内の金融政策
・商品本位制→完全なものは実現不可能
金本位制連邦準備銀行→強力な裁量権→経済の不安定化
・全体を考える時と個々のケースを考える時とでは結果が異なるP114
「人は、自分が多数派の時は他人の言論の自由を奪うのは平気でも、
自分が少数派の時は言論の自由を奪われるのは大いに気になる」
・インフレターゲティングがよい→安定した物価水準の維持を金融当局の任務にする
通貨供給量の一定増のために何をすればいいか


4、国際金融政策と貿易
・国際通貨制度と経済的自由
・輸入割り当て×
・1930年代アメリカの金の個人所有の禁止は最悪
・国際収支の均衡化
①外貨準備を取り崩すか、外国にドルの準備を増やしてもらう
アメリカの物価を他国より押し下げる
③為替の変動で同じ効果を狙う
④政府による貿易統制や介入→最悪


5、財政政策
ケインズ的財政政策は誤り→所得の再分配が起こるだけ。しかも貯蓄に回されたら最悪。

6、教育における政府の役割
・教育は政府が行うものか?
初等教育は機会均等のため、最低限受けさせる。
・バウチャー制度(教育費のクーポン)により、学校に市場原理を持ち込む。
・学校教育を民間投資によって充実させる
職業訓練に政府の支援はいらない。あるとすれば奨学金のような制度。それも民間が行うべき。
→外部効果(正の)があるもののみ政府が行うべき
みんなが支出した投資でみんなが恩恵を被るようなもの
奨学金のような制度であれば、「個人への投資」であるのでOK


7、資本主義と差別
・資本主義は差別を助長しない。個人の価値観を大事にするものである。
8、独占と社会的責任
・談合は×政府はカルテルをやめさせる。
・企業は株主の道具であり、企業の最終所有者は株主である。P252
9、職業免許制度
・医師などの免許制度は一種の談合である・
・自由に医師を開業してもいいようにするべき。
・凝り固まった既存の常識観念へのアンチテーゼ
「キャデラックより品質の劣る自動車の生産を禁じると主張したら、非現実的ではないか」P280
医師免許も同じ
・医療デパート、老舗の医療機関

10、所得の分配
マルクス「あらゆる生産物を作ったのは労働者だが、労働者にはその一部しか支払われていない」
→残りは「剰余価値」として「搾取」されているという考え方。
→生産物の合計と限界生産物(生産に付加された量)が混合されている。
→労働者には生産物をその労働者が作ったのと同じ分だけ支払われているはずだ。(?)

累進課税はよくない。特に所得の再分配だけを目的とする場合においては。
→政府がしなければならない事業の資金を調達するためなら○
11、社会福祉政策
公営住宅→住めない人を増やした
最低賃金法→失業を増やした
・農産物価格支持制度→消費者は2重に損をしている

・年金→国営化はコストがかかる。専門家。行政機関
・自分の老後に備えなかった人は社会の負担になる
→1%のコストを防ぐために、なぜ99%の自由を制限しなければならないのか。P339
大恐慌の時代にできた法律は改めるべき

12、貧困対策
・貧困を減らす対策に政府が関与するのはある程度妥当。
・貧困者による負の外部性があるから。
・「負の所得税」→基礎控除以下の人への補助金。税の一元化が可能になる

13、結論
・政府の介入は熱狂をもって受け入れられがちであり、一旦導入されるとなかなか消えない。
・よって、改めて考え直す機会が必要である。
自由主義は個人の価値観を尊重する考え方である。