national competitive strategy

「国の競争戦略」を読む。
政府は自国の産業を保護しようと思うあまり、長期的には新産業や既存産業のイノベーションが生まれないような状況であることが分かっていながら、中小企業の保護や、各種のカルテル保護貿易などを続けていることは産業組織論の分野では盛んに言われているし、実際にそうなのだろう。本書はイタリア・スウェーデン・スイス・韓国・日本・アメリカ・イギリスなどを例に挙げ、それぞれの国における競争優位産業の成り立ちとその要因を分析し、今後の将来像についての政府の役割について記述しているが、基本的には産業組織論的の実際の例における応用である。ただ、これが書かれたころは1980年代後半だと思われるので、その頃の日本についての記述を現在の状況と比べると、暗い気分になってくることは確かである。
規模の経済からイノベーションの経済へと進み、富推進の経済へと進んでいく過程はアメリカ、イギリス、スイスが日本の一歩未来を行っている。特にイギリスは、富推進の経済となり、資金を運用するのみでイノベーションを起こすことはなく、吸収合併に明け暮れるようになってしまった。真に経済を発展させるのはイノベーションであるという主張が正しいとすれば、言語の障壁を持つ日本は、生産性の低いサービス業・小売業の改善・イノベーションを図り、高度な流通システムを構築することで世界でリードしていけるのではないか。製造業についても同じことが言える。

国の競争優位〈上〉

国の競争優位〈上〉