vision of the structure of industry

産業構造ビジョンの報告書について。日本では労働分配率がすでに高い。また、労働生産性は諸外国と比較して低い。どういうことかというと、雇用が供給過剰であり、雇用の流動性もないため、みんなで低い給料で頑張って、ぎりぎりのところでなんとか生活しているということである。池田氏は次のように述べている。

たとえば「日本の労働分配率は諸外国より高いので、所得再分配よりパイの拡大が大事」(p.7)とか、「グローバル企業とそれ以外の業種の一人当たり付加価値額が乖離しているので、ドメスティック企業の付加価値を高めることが鍵」(p.17)といった問題は当ブログでも論じたが、霞ヶ関も同じ認識のようだ。

問題は、そこからである。日本の事業コスト(特に法人税)が先進国で飛び抜けて高く(p.34)、企業の海外シフトが進んでいる(p.10)のだから、やるべきことは規制改革や減税によって事業コストを減らす――という話になるのかと思ったら、41ページから唐突に「ターゲティングポリシー」が出てくる。

同様の感想を持った。企業の税制や規制緩和の話になるのかと思ったら、ターゲティング政策の話になっていた。だがこれは、省庁間をまたいだ政策に言及できないジレンマがあるのであろう。ターゲティング政策が無駄だというのは早急だと思うが、省庁間をまたいだ議論と、首尾一貫した報告をすべきだと思う。