economic failure

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

日本の現状認識として、データを並べて分析した本。事実と結論をつなぐ論理には必ずしも同意できない点もあるが、日本経済を多面的に考える上では一つの材料となる。

思ったこと:GDPや経済成長率だけで日本人の豊かさを測るのはいい加減やめにしたらどうだろうか。日本がもし、インフラが整備されて、社会的なコストが低く抑えられれている社会なのだとしたら、その中でさらに投資して無理矢理経済成長を生み出そうという論理はおかしい。ムダな投資はムダな空港やムダな道路により、効率的な地域運営を阻み、逆効果を生んでしまう。たとえば、何の産業もないところに、誰も使わないような地方空港を造ったとしよう。無駄になったお金は、地方空港の建設費と運営費だけではない。本来ならそれを本当の意味での地域活性につなげることができたはずの効果を無くしてしまったことと、その周りの人々をその土地にしばりつけてしまったという機会費用が存在している。

日本の豊かさを測るうえでは、おそらく他国のGDPから、インフラ投資に回された分をマイナスしたものと、日本のそれとを比較してみるのが良いのではないか。たとえば韓国では、財閥による大規模団地の建設が進んでいるが、住宅供給が足りている日本では、そのような開発の力はない、というか必要とされないだろう。

重要なのはおそらく、「GDP以外で豊かさは測れないのか」ということと、「本当に必要なものに投資されているか」ということであろう。「日本の法人税は韓国の1.5倍ぐらいだから、法人税率を引き下げて企業が外に出ていかないようにするべきだ」という議論があるが、私はこれは正しいと思う。グローバル化が進む中で、人々の移動が自由になってくると、社会システムは各国で似通ったものになってくるはずである。そのため、日本も諸外国と同率の消費税や法人税率にするべきである。そのうえで、知識集約型の産業に集中投資し、また、積極的に発展途上国の問題解決を図ることで、外需を取り込むことが必要なのである。それをした結果によって、GDPの成長が止まったとしても、それは気にしなくてもいいのではないか。課題先進国の日本には、日本のやるべきことがある。目先の数値にあたふたしてはいけない。