人類はすでに解決策を用意している問題は提起しない

「100年予測」を読んだ。エピローグで触れられたマルクスの言葉。提起されている問題はすでに解決策が存在しているということ。たとえば、地球温暖化問題など。「100年予測」では、すでに提起されている問題ではなく、現実のデータから予測されうる世界の50年後、100年後のシナリオを描くことによって、これから何が起ころうとしているかを考えさせるものである。
序章
・過去20年間を振り返ると、世界は劇的に変化している。
・「地政学」を用いた分析を行う
・現実の制約の中では、100年に起こる大まかな輪郭がつかめるのではないか
1章
・21世紀はアメリカの時代になる
アメリカが世界の海洋を支配している
アメリカは実は驚くほど強力だ
2章
・20年前のソ連崩壊により、イスラム地域が急速に不安定になった。
イスラム世界が混乱していれば、アメリカは勝ったといえる
3章
人口爆発は終焉
・人口の減少は生き方や行動に大きな影響を及ぼす
・人口減少やITなどが新しい世界を形作る
4章
・火種は東アジア、旧ソ連、ヨーロッパ、イスラム、メキシコ
・2020年は中国とロシアが重要になる
5章
・中国が世界的国家となることはない
・中国は中央政府が力を失い、分裂するだろう
6章
・ロシアは資源輸出国として生まれ変わり、コーカサス中央アジア、ヨーロッパに力を強める
・ロシアとアメリカの間で再び冷戦が起こるが、ロシアが再び自壊する
7章
アメリカは50年周期で経済的・社会的危機を迎えている
・次の危機は労働力不足。2030ねんごろ、移民の受け入れ拡大を行うだろう
8章
・ロシア、中国の衰退により、日本、トルコ、ポーランドが力を伸ばす
9章
アメリカは日本やトルコへの締め付けを厳しくする
・日本とトルコは同盟を結ぶ
アメリカは宇宙での軍事活動を本格化する。
10章
・2050年には日本とトルコ対アメリカの戦争が始まる
・この戦争は、技術開発による宇宙戦争である。
11章
・宇宙偵察システムによる情報収集と宇宙発電が鍵を握る
12章
アメリカは戦争のあと、もっとも利益を被る
・2060年代にはアメリカは宇宙の商業利用を進める。
13章
アメリカは移民の増加に悩む
・メキシコが経済大国となり、アメリカに挑戦する。


日本とトルコがアメリカに宇宙戦争を仕掛けるというシナリオはかなり荒唐無稽だと思うが、宇宙での技術開発が、大きなビジネスチャンスを持ち、かつ各国の覇権争いの場になるならば、解決は困難を極めるようになるかもしれない。この本の手法は、100年先はわからない、というスタンスでありながら、歴史は繰り返すことを念頭において書かれており、その点で自己矛盾が起こっている。しかし、推測の程度や方向性に異論はあるにせよ、考えられるシナリオとしては興味深い。ドラえもんに描かれている道具が実際に私たちが使用している携帯電話のように現実化したるするような、SFが現実化することもあるので、無下には否定できないだろう。むしろ、現実に即したSFとして考えるのが妥当であるのではないかと考える。
その点で、未来を予想する上で、必ず正しいと思われるものは、労働力の推移なのではないかということを思った。現在の出生率と生存率から、将来の人口と、各国の労働力はある程度の精度を持って予測することができる。労働力がそのまま何かに直結するかどうかはわからないが、未来を予測する上で、確実なデータがあるということは、やはり未来が現実によって制限されているということであり、何らかの予想は可能であるということなのだと思う。できることなら戦争に進むことなく、宇宙での技術開発が、人類に幸せを与えるものであってほしいと願う。

100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

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