Is cooperation stock holder's?

公開会社法の話が経済学者の中で問題にされている。

民主党藤末議員

「本日、日経新聞の一面に載っていたように、公開会社法の本格議論が進んでいます。私も、民主党のプロジェクトチーム事務局でポストいただき参加しております。思い入れのある施策ですポイントは2点ございまして、
1.これまでよりも、会社の規模により分別した規制をかける、ことが重要です。すなわち、上場企業は特別な規制が必要ということです。
金融証券取引法との調整・連携も必要です。
2.最近のあまりにも株主を重視しすぎた風潮に喝を入れたいです。
今回の公開会社法にて、被雇用者をガバナンスに反映させることによ労働分配率を上げる効果も期待できます

池田氏
民主党のような愚劣な話が後を絶たないのは、かれらが生存している企業の合計だけを見ているからだ。この錯覚をタレブは、次のような寓話で説明する:
架空のファンドマネジャー1万人をコンピュータの中につくり、最初の年に半分が1万ドルもうけ、半分が1万ドル損をして退出する・・・というシミュレーションを繰り返すと、5年目には313人が5年連続で合計5万ドルもうける。しかしメディアは彼らを賞賛し、その投資術を書いた本がベストセラーになるかもしれない。
5年目に生き残った313人だけを見ると、1万ドルが5万ドルになって大もうけのように見えるが、残りの9687人の投資リターンはマイナスだから、全体としてはギャンブルは(テラ銭を差し引くと)必ず損になる。ところがギャンブラーは大もうけした人だけを見て賭け続け、宝くじを買う人はみんな自分だけは当たり籤を買うと信じている。このような生存バイアスによって、カジノも資本主義も成立しているのである。

だから起業するのは合理的行動ではないが、そういう非合理的な人々の中のごく一部が大成功してイノベーションを実現すると、社会全体が利益を得る。資本主義は、多くの株主の犠牲によって繁栄しているのだ。ところが結果だけを見ていると、一部の企業が「もうけ過ぎ」に見えるので、民主党のようにそれを規制し、高い法人税を取ろうとするポピュリズムが出てくる。こういう「勝者を罰する」国から企業は脱出し、労働者に分配すべき所得も減り、すべての人が貧しくなるだろう。」

「牧野洋氏も指摘するように、日本の経営者は「株主を重視しすぎる」どころか、いかに株主を無視して自分の地位を守るかに多大なエネルギーを費やしている。藤末氏の話は1980年代に欧州で流行した「ステークホルダー資本主義」というやつだが、そんな流行はとっくに終わり、株主資本主義がもっとも効率的なガバナンスだというのがTiroleの結論である

藤末議員の発言擁護派
そもそも、彼の言う「最近の余りにも株主を重視しすぎた風潮」、そしてそれを問題だ、と思う感覚自体は、至極まっとうじゃないのか。
(問題は「会社公開法」はそれ必ずしもその解にならない、ということだと思うが)
まず「最近の余りにも株主を重視しすぎた風潮」というところだが、ここでは比較対象は、他の欧米諸国と比べてるんではなく、「日本の昔に比べて」ってことを言ってるのだと思う。(流石に、アングロサクソンに比べて、日本企業が株主を重視してると言える人はいない)
歴史を見てみる。例えば、1970〜80年代には、日本では優良大手企業でさえ利益率5%以下が普通だったのが、現在の企業経営ではROEと利益率が神様みたいに崇められてる。これは「株主を重視しすぎる風潮」と言わずしてどう説明するか。

当時の日本企業は「効率が悪かった」のだろうか?極端な議論かもしれないが、良いものを安く売ることで消費者に還元していた、とはいえないか。多少コストが高くなっても、簡単に従業員をクビにせず、たくさん雇っていたのは、従業員に還元していた、とはいえないか。
米国の「優良企業」のように30%も営業利益を取るかわりに、5%以下に抑えて、消費者や従業員のためにはなっていたのではないか。

個人的には最後の意見に賛成だ。民主党の議員が経済学の奥深くまで考えてツイッターで発言しているとは思えない。民主党の議員が考えていることは、選挙で評価されるような政策に携わることであり、そのためには会社公開法に関わって「株主主権から会社を取り戻す」ように働きかけることが国民にとってのアピールになると考えたからそのように行動しているのだと思う。ということは、会社が株主のものになっているというのは、国民の間には何となくそう思われている無意識の共通認識のものなんじゃないか。学者はそれを頭ごなしに否定するのではなく、そもそもそのような共通認識が生まれた背景には何があるのか、そしてこのままその認識を持ち続けるとどのようなリスクが伴うのかを提示することが役割なんじゃないか。最後の人が言うように、枝葉末節に捉われがちなのは、センセーショナリズムにつながりがちであり、ツイッターやブログなどのツールの有用性を台無しにしかねないので、注意するのにとどめておくぐらいがちょうどいいんじゃないか。
ところで私も「会社は株主のもの」であることに疑いはないと思う。なぜなら法律にそう書いてあるから。だけど、会社を存続させていくには、従業員がいて、消費者がいなくてはならない。そして、会社を存続させなくては株主にも不利益が生じる。よって、「株主のこと」を考えるのであれば、必然的に従業員・消費者のことも考えないといけない。つまり、株主・従業員・消費者は運命共同体なのではないか。「株主のことしか考えていないと、イノベーションのための長期投資ができない」と嘆いているのは真の意味で投資家のことを考えていないともいえる。投資家はその会社の株を買った時点で、同じ車に乗り合わせているようなものだから、短期的なスピードの上下ですぐ降りてしまう投資家もいるだろうが、長期的に目的地までたどり着けることも尊重する投資家もいると思われる。
カジノ資本主義は問題だと思われるが、ギャンブルと実体経済は違うのではないかと思われる。アメリカのベンチャー企業で5年で50%が無くなり、投資回収ができるのが10%というのは驚きだが、それは本当にいいサービスや製品が提供できているのが10%ぐらいってことじゃないのか。適切なマーケティングに基づいて、新たなイノベーションを元にした財を提供すれば、投資リターンが得られる確率は大幅に上がるのではないか。その点でギャンブルとは異なると考えられる。ただ、起業することを目的としていると、ギャンブルになりがちなのではないかと思われるので、そのあたりの「真剣度合」を見極める必要はある。