Why Japan loses on business, despite their good skill

「技術力で勝る日本がなぜ事業で負けるのか」(妹尾堅一郎)を読む。
読む前に強烈なタイトルだったので、その理由を考えていた。「そもそも技術力で勝っていないんじゃないか」ということと「勝っていてもビジネスが下手なんじゃないか」ということだった。前半については特許取得数が多いという点で勝っているという前提で議論が進み、後半についてはやはりそういうことだった。ただし、特許取得数が多くても未利用特許も多いし、国際特許と比べているわけではないので一概には比較できないところもある。ビジネスにうまくつながっていないというのはその通りだと思う。根っからの賤銭思想のせいか、日本人はあまり知財権でビジネスをするのがうまくないのかもしれない。しかし、今後はそうも言ってられないだろう。きっと、アメリカもそういう時代を超えてきたのかもしれない。

・全体が2位でも、特許の登録件数が1位なのに、知財権が適切に強化されているかは16位。
・3位一体の経営。1、製品アーキテクチュアに応じた急所技術の見極めとその研究開発、2、ブラックボックス化とオープン化の線引き。知財マネジメント。3、インベンションとディフュージョンを図る事業計画。
・プロセスとプロダクト、イノベーションとインプルーブメントの違い。「成長」はインプルーブメントだが「発展」はイノベーション。日本は既存モデルの伸長ではなく、まったく新しい段階へと発展するべき。
イノベーションによる発展とインプルーブメントによる生産性向上は補完関係にある。
・「産業生態系」という考え方。高度経済成長期に若々しかった木々も、今や大木となり周りの下草も枯れているベンチャーの盛んな創業が必要だ。企業内ベンチャーや中小企業の第2創業、大学発ベンチャーなどが考えられる。
・テクノロジープロジェクションモデル:創造から権利の保護、活用をすることによる新たな創造の流れ
イノベーションシナリオリフレクションモデル:事業構想から知財ミックスの最適化を考え、知財調達リソーシングを考えること。
・問題への対応は改善・解決・解消・置き換えなどの対処法がある。
・「基幹部品主導型のインテル」と「完成品主導型のアップル」。「インテルインサイド型」と「アップルアウトサイド型」。インテルは「内オープン外クローズ」、アップルはソフトやサービスなどで利益を得る仕組み。
・物流インフラ、エネルギーインフラ、情報インフラのネットワークがすべて社会の中で重なり合ったとき何が起きるか。
・ヤングレポート(1985レーガン時代):技術経営とプロパテント(知財重視戦略)→日本に対して
・パルサミーノレポート(2004):プロイノベーションと人材育成→NiesBricsに対して
・オープン戦略とは囲いこむ戦略である。
・日本が採用するPDC方式の携帯通信技術は日本でしか使われていない。ノキアモトローラ基地局の技術をブラックボックスにすることで、他をオープンにしてもその部分で収益を上げ、さらに標準化を狙う仕組みがある。
インテルもアップルも「準完成品」である。
・事業として成り立たせるためには、ディフュージョンが必要である。三菱化学は、台湾にDVDの作り方、いわばレシピ付きの食材を渡し、製造させることで、自分たちの素材がもうかる様な仕組みを考えた。標準と素材で抑えている。
リバースエンジニアリングできるかどうかが権利化して秘匿とするか否かの境目。
・マネジメントの階層は「ディレクション(監督)」「アドミニストレーション(管理)」「オペレーション(経営)」の3つにわかれる。
・エアコンで言えば、「部屋の温度を一定に保つこと」が「ディレクション」、「何度に保つのが適切かを決めること」が「アドミニストレーション」、他の方法がないかを検討して決めることが「オペレーション」である。
・未利用特許は全体の50%ぐらい。保護柵特許や侵入禁止特許などもあり、未利用特許が一概にムダとは言えない。
・知の新領域の創出モデル:アドバンスト・インター・ニッチ・フュージョン・トランス・メタなど