negotiation

ハーバード流 交渉術―イエスを言わせる方法―(フィッシャー&ユーリー)
交渉術について有名な本だったので読んでみた。立場駆け引き型交渉においては、参加者との友好関係を重視する「ソフト型」と参加者にたいして高圧的に接する「ハード型」、そして、参加者とともに問題解決を図る「原則立脚型」があり、「原則立脚型」が最も良いとしている。その方法は、「人と問題を分離すること」「立場ではなく利害に焦点を当てること」「まず複数の選択肢をつくり、決定はその後にすること」「客観的基準を強調すること」など、当たり前とも思えるが重要なことが書いてあり、参考になった。ただ、実際に身につけていくには、本を読んだだけでは全然だめで、実務において実践していくことが必要だと思う。

ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)

ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)

the process of policy making

政策形成の過程―民主主義と公共性―(チャールズ・E・リンドブロム、エドワード・J・ウッドハウス
政策の形成過程においてかかわるステークホルダーが、自己の利益の最大化を目指して動くとする公共選択論的な考え方と、省庁だけでなく、民間の利益団体・業界団体や政治家、また一般の企業なども広い意味で政策形成にかかわっているという考え方は新鮮である

政策形成の過程―民主主義と公共性

政策形成の過程―民主主義と公共性

vision of the structure of industry

産業構造ビジョンの報告書について。日本では労働分配率がすでに高い。また、労働生産性は諸外国と比較して低い。どういうことかというと、雇用が供給過剰であり、雇用の流動性もないため、みんなで低い給料で頑張って、ぎりぎりのところでなんとか生活しているということである。池田氏は次のように述べている。

たとえば「日本の労働分配率は諸外国より高いので、所得再分配よりパイの拡大が大事」(p.7)とか、「グローバル企業とそれ以外の業種の一人当たり付加価値額が乖離しているので、ドメスティック企業の付加価値を高めることが鍵」(p.17)といった問題は当ブログでも論じたが、霞ヶ関も同じ認識のようだ。

問題は、そこからである。日本の事業コスト(特に法人税)が先進国で飛び抜けて高く(p.34)、企業の海外シフトが進んでいる(p.10)のだから、やるべきことは規制改革や減税によって事業コストを減らす――という話になるのかと思ったら、41ページから唐突に「ターゲティングポリシー」が出てくる。

同様の感想を持った。企業の税制や規制緩和の話になるのかと思ったら、ターゲティング政策の話になっていた。だがこれは、省庁間をまたいだ政策に言及できないジレンマがあるのであろう。ターゲティング政策が無駄だというのは早急だと思うが、省庁間をまたいだ議論と、首尾一貫した報告をすべきだと思う。

フリー2

内田先生もフリーと同じことを述べている

「グーグルがすでに存在する世界」においては「デジタル・コンテンツに課金する」ビジネスモデルは「デジタル・コンテンツそのものには課金せず、無料コンテンツが簡単な操作で簡単にダウンロードできるシステムがデファクト・スタンダードになった結果たまたま生じるバイプロダクツで小銭を稼ぐ」ビジネスモデルに必ずや駆逐される。
ことの「よしあし」ではなく、そういうものなのである。

重要なのは潤沢にある資源の中で、いかに希少なものを発見し、ビジネスにつなげていくかということだ。

free

free(クリス・アンダーソン)をよむ。
もはや当たり前ともなったフリーの世界だが、グーグルやyoutubeなどのサービスは一昔前までは想像もできなかったことだ。それが今や、ほとんど費用を払わずに各種のサービスを利用すことができる。ただ、何かのサービスは、アトムからビットになったといっても、それはだれかがデータを構築したものと、サーバーの容量を利用しているのであって、完全にゼロコストであるとは言い切れない。その意味では、アトムの経済とビットの経済が完全に異なるものであるというわけではない。しかし、ビットの経済では、一つのサービスがフラットな世界にいる全ての人に訴求することができるので、限界費用をゼロに近づけることができる。そのことは、既存のマーケティングの概念やプラットフォームの開発概念を変えているのかもしれない。この転換を認識していないと、海賊版の撲滅に関するいたちごっこに多大な労力をかけて損をすることになりかねない。
フリーの形態
①直接的内部相互補助(顧客が何かを買うことを望んでいる)
②3者間市場(広告収入でまかなう)
フリーミアム(無料と有料のバージョンがある)
④非貨幣市場(評価とアクセス数が貨幣となる)

・考えることに費やされるコストは「心理的取引コスト」という
・コンピューターは最初その使い方がわからなかった。カッコよく見えるだけのアニメーションやディスプレーなど、一見無駄に見えるものが、使いやすさを付加し、消費者に訴求した。
・「安いこと」と「無料」の間にはギャップがある。
・勝者と敗者の格差が広がる「ネットワーク効果」がおこりやすい。
・グーグルの広告の再定義は「表明された欲求と商品を結び付けること」
・レコード会社の利益と音楽市場全体の利益を同一視するのは間違いだ
・フリーにかかわるコストは「隠されたもの」から「分散されたもの」に変わりつつある
・フリーと競争するには潤沢なものを素通りしてその近くにある希少なものを見つけること

①デジタルのものは遅かれ早かれ無料になる
②アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
③フリーは止まらない
④フリーからも金儲けはできる
⑤市場を再評価する
⑥ゼロにする
⑦遅かれ早かれフリーと競い合うことになる
⑧ムダを受け入れよう
⑨フリーはべつのものの価値を高める
⑩希少なものではなく、潤沢なものを管理しよう

アトムからビットへの変化の時代は、産業革命の時代と似ていると著者は述べている。労働集約型の産業が知識集約型の産業に変化していく過程では、市場は大きく変容する。その時、その波に乗り遅れたり、間違った方向へ進もうとすれば、うねりの中に飲み込まれてしまう。常に原理原則に立ち返り、「資源は豊富か、希少か」を常に考え、それに応じた戦略を考えなければならない。

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

why japan loses?

「日本はなぜ敗れるのか」(山本七平)を読む。
戦争になぜ敗れたのか、その原因を探ることで、日本人の平時には表れない民族的な精神性を探っている。
敗因21カ条

■合理性・不合理性(思想)
・日本の不合理性、米国の合理性
・日本の学問は実用化せず、米国の学問は実用化した
・指導者に生物学的知識がなかったこと
・基礎研究をしてこなかった
・人命を粗末にしたこと
■資質・物量の問題(ヒト・モノ)
・精兵主義の軍隊に精兵がいなかったこと
・物量などが米国に比べモノにならなかったこと
将兵の素質低下
・電波兵器の劣等
■精神論
・精神的に弱かった
・克己心の欠如
・反省力無きこと
・個人としての修養をしていないこと
・独りよがりで同情心がないこと
・バーシー海峡の損害と戦意喪失
・思想的に徹底したものがなかったこと
・兵器の劣悪を自覚し、負け癖がついたこと
・国民が戦いに飽きていた
・日本文化の確立なきこと
・日本文化の普遍性なきこと
■組織
・陸海軍の不協力
これらの敗因をグルーピングすると、まず思想として、合理的にものを考える教養が欠落していたことで寄って立つような精神の柱がなく、ヒトやモノが不足していても戦争状態に突入してしまった事があげられる。それに加えて、組織の内部摩擦もある。
「日本辺境論」と読み比べると実に興味深い。「日本辺境論」は日本人がどのような種族なのかを述べたものだが、それは「日本はなぜ負けるのか」に通じるところが有ると思う。思想として、合理的にものを考えることが出来ないのは、日本人がそもそも辺境の民として自らを定義しており、他国から取り入れたシステムをアレンジし続けていたからである。よって、自分で何かを考えるということをせずに、合理的に考えずに、権力にひれ伏す形で間違った方向に進んでしまった。そうすると、それが終わった後は、その本家のせいにして自分は言い逃れる道が出来ているという思考回路である。
しかし、私はこの「合理的な思考」というのは日本人の目指すべきところでは有るかもしれないが、到達できるものではないと考える。アメリカのように、何もなかった所に色々な人が集まってきて一から建国した国でなければ、借り物のシステムが取り敢えず続いているということは往々にしてあることだし、一概に否定することは非効率的であると考える。だとすれば、日本人が出来ることは、借り物のシステムを自分に合ったようにチューンアップして、もっといいものに作り替えることではないだろうか。それは、資源の少ない日本で、なんとか上手くやってきたことに由来する、一種の技能のようなものであると考える。だから、合理的な思考を目指しつつも、すり合わせの思考でしのぐという両者bを併せ持ったハイブリッドな思考でなんとかやっていくことはできないかと考えるのである。(例えばISOを日本版に作り替えたエコアクション21のように)

competitiveness of japanese industry

日本の産業構造研究
■他国
日本の技術力の源泉は生産現場と開発現場においてもたらされている。一方、米国ではベンチャー企業から、アジアでは日本企業製品からもたらされている。

工作機械の生産額は1位

■自国
半導体素材メーカーの世界シェアは大きい

素材・部品メーカーの利益率は高い

■市場
・国内の素材産業の高付加価値化は頭打ち